もふもふ大好き 怪盗仏陀

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佐藤千夜子「あぁ 東京行進曲」 後編。


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佐藤千夜子佐藤千夜子を御存じだろうか?  昭和初期、一世を風靡した歌手である。歌謡曲の元祖でもある。

 

「あぁ 東京行進曲」…後編。

 

日本ビクターから出す千夜子の歌は大ヒットを繰り返していた。そんな順風満帆な千夜子だったが、突然 イタリアに行くこと決める。「これからはオペラだ」、、野口雨情も中山晋平も千夜子の決断に反対した。千夜子には、恩師野口雨情の言葉さえ聞く耳が持てなかった。「私の歌は民衆に愛されているのよ。イタリアに行って最高の舞台で歌うの」

当時、海外に行くのは全て船旅だった。


当時、海外渡航は莫大なお金が必要だった。千代子は、有り余るお金を手に入れていた。昭和5年末、港には たくさんのファンや報道陣、日本ビクターの関係者、さらに野口雨情、中山晋平山田耕筰西条八十など友人の面々が見送りに来ていた。佐藤千代子は 颯爽とイタリア・ミラノに向かった。f:id:mickymagicabc:20210611144849j:image

イタリア・ミラノでは、オペラ歌手の修行と共に日本の新歌謡をイタリア各地で披露していた。千夜子は、その功績を称えられイタリアからメダルを授与されている。しかし、オペラ歌手としては現実は厳しく名声は得ることは出来なかった。四年後の昭和9年11月、千夜子は帰国した。日本に向かう千夜子は、港でファンの大喝采を受けるものと思っていた。しかし、出迎える人は、事前に連絡したほんの僅かの人だけだった。

 

帰国した佐藤千夜子は イタリア仕込みのオペラを観客に披露した。しかし、オペラの良さを分かる日本人は殆んどいなかった。「歌はうまいんだが、なんで外国語で歌うんだ」「佐藤千夜子っ誰?」佐藤千夜子は、既に世間から忘れられていた。

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昭和11年藤山一郎の「東京ラプソディ」が大ヒットした。

作詞:門田ゆたか
作曲:古賀政男
「東京ラプソディ/ 昭和11年

 

花咲き花散る宵も
銀座の柳の下で
待つは君ひとり 君ひとり
逢えば行く ティールーム
楽し都 恋の都
夢のパラダイスよ 花の東京

 

現(うつ)つに夢見る君の
神田は想い出の街
いまもこの胸に この胸に
ニコライの かねも鳴る
楽し都 恋の都
夢のパラダイスよ 花の東京

 

明けても暮れても歌う
ジャズの浅草行けば
恋の踊り子の 踊り子の
ほくろさえ 忘られぬ
楽し都 恋の都
夢のパラダイスよ 花の東京

 

夜更けにひととき寄せて
なまめく新宿駅
あのこはダンサーか ダンサーか
気にかかる あの指輪
楽し都 恋の都
夢のパラダイスよ 花の東京

 

花咲く都に住んで
変わらぬ誓いを交わす
変わる東京の 屋根の下
咲く花も 赤い薔薇
楽し都 恋の都
夢のパラダイスよ 花の東京

 

佐藤千夜子は 日本ビクターから新曲を発表するも、レコードは全く売れませんでした。千夜子は、既に過去の人となっていたのです。
そんな時代、戦争の足音が聞こえてきました。ラジオからは、軍歌の勇ましい曲が流れてきた。華やかな歌が勇ましい歌に変わっていったのです。

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昭和14年9月、ナチスポーランドを進攻。

昭和14年同月大日本帝国中華民国江西省北部から湖南省に西進。

昭和14年10月、大日本帝国、広西省(現・広西チワン族自治区)の省都南寧を占領。

昭和15年5月、大日本帝国重慶を大空襲。

昭和15年9月、日独伊三国軍事同盟成立。

昭和16年12月、大日本帝国真珠湾攻撃。米英に宣戦布告。
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そんな、ある日千夜子の自宅に三人の兵士が訪問してきます。

「佐藤さん、前線の兵士の為に歌を歌ってくれないか」 千夜子は 戸惑いましたが直ぐに了承しました。

佐藤千夜子は、戦中、南方方面の前線に慰問に行きます。前線で戦う兵士からは大歓迎されました。千夜子の美しい歌と懐かしい歌で、祖国を思い涙を流す兵士もいました。

 

そんなある日、南方各地を慰問遠征中に、佐藤千夜子慰問団の乗った船が米国の潜水艦に攻撃され沈没します。海に投げ出された千夜子慰問団は漂流し、山本五十六艦隊の戦艦大和に助けられます。佐藤千夜子は女性としてただ一人、最初で最後の戦艦大和の搭乗員となりました。


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千夜子は 大きな戦艦大和に驚き、そこで働く数千人の水兵たちの為に何か出来ないか 山本五十六艦長にお願いしました。

 

「日々ご苦労されている水兵さんに、ささやかですが歌を差し上げたいです」

 

佐藤千夜子慰問団は、戦艦大和の甲板で演奏し兵士の前に立ち歌を捧げました。戦艦大和の搭乗員は二千七百人にも及びます。今で言うと、さながら戦艦大和での初のライブコンサートです。

 

「千夜子さん、艦内の兵士たちが愛唱する「夜戦部隊の歌」を歌って頂けないだろうか」と山本五十六艦長が言います。

 

すかさず兵士たちは、皆で「夜戦部隊の歌」を歌い上げます。千夜子は それを聞き、兵士と共に歌いました。千夜子は彼らの将来を憂い泣きながら歌いました。

 

山本五十六連合艦隊司令長は、兵士が愛唱していた「夜戦部隊の歌」を内地に持ち帰って欲しいと千夜子に依願しました。


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昭和20年8月、太平洋戦争は終結しました。終戦後、千夜子は全く忘れられた存在となり、事実上芸能界から引退しました。


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戦後復興で活気が戻ってきた銀座。千夜子は、あるブティックの前で立ち止まります。立派な洋服が並ぶショウウィンドウに、気になる毛皮が陳列されていました。どうも見たことがある毛皮です。千夜子は思わず、ブティックに入りました。千夜子の服はみすぼらしく、その店に似つかわしくありません。千夜子は、そんな事を気にせず、その毛皮を手に取ります。裏に「佐藤千夜子」と自分の名前が刺繍されています。
「これ、私の毛皮だ」
戦前、銀座を闊歩していた頃の千夜子の毛皮でした。千夜子の優雅で最高の時期を過ごした毛皮でした。

「これ、私の毛皮です」
「何を言っているんだ。人聞きの悪いことを言うな」
「いや、昔 私が持っていた毛皮なんです」
「知らないよ。そんな事」
「いや、あの、、、」
「警察を呼ぶよ」

その時、窓の外に知り合いの姿が見えました。それは恩師野口雨情の姿でした。野口雨情を見た千夜子は、その毛皮を持ったまま店を出ます。

「あぁ 野口先生、、」
「おい、おい、待て!」

千夜子は、お店の人に捕まり警察に引き渡されます。

 

「東京行進曲の佐藤千夜子、窃盗で逮捕」千夜子は、翌日の新聞に載ってしまいました。


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時は経ち、、
昭和43年、新宿の公園で苦しんでいるみすぼらしい老婆の姿がありました。老婆は、戦傷軍人と共に公園で生活する浮浪者でした。直ぐに救急車で病院に運ばれ身元が調査されました。 老婆は佐藤千夜子でした。千夜子の病状は重く病院の介護も空しく、昭和43年12月13日、がんのため東京都立大久保病院で死去しました。享年72。千夜子は生涯独身で家族はいませんでした。

 

その後、、、
千夜子の過去の功績を知る古賀政男等の手により、千夜子の遺骨は地元の天童市に埋葬されました。クリスチャンだった千夜子は地元天童市の共同墓地に埋葬され、そばの壁には佐藤千代の本名で刻まれています。


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天童市の天童公園(舞鶴公園) 愛宕沼畔に「佐藤千夜子顕彰碑」がある。


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古賀政男明治大学の学生時代に佐藤千夜子と共演し、古賀政男の才能を最初に認めた恩人でした。古賀政男が在学中に古賀作曲の歌を二曲、レコード化させています。その後、古賀政男は日本ビクターと契約し、デビューしています。