夕張 黒ダイヤ祭りとウルトラマン
小学生の低学年の頃 夕張黒ダイヤ祭りでウルトラマンとウルトラ怪獣が来たことがあった。場所は夕張本町にあった歌手 大橋純子さんの実家の蕎麦屋の前だった。怪獣は三頭ほど…私たちは 毎週テレビで見ているウルトラマンが来たと大盛り上がりだった。
夏の祭り 北海道とはいえ炎天下では 暑くて中の人も大変だっただろう。ましてや 私たちの様なガキンチョが回りを囲み その対応だけでも疲れてしまう。
20~30分もしない内に お店の脇に隠れて 着ぐるみの中の人が涼を求めて出てくる。その度に子ども達の歓声。「うるせえぞ!」 街の有志の若者が入っていたのか?有志と言っても 自ら率先してなどという若者はいなかっただろう。推薦かお願いされたか? とにかく 口は汚い。「見せもんじゃねぇぞ」「近寄るな」
私たちも負けてない「ウルトラマンが喋った」「ウルトラマン 怪獣やっつけて」「なんだよ偽物だ」「やっぱり人が入っている」 私は 幼かった為 その子ども達の輪から離れて 店の家の角にいた。
私は 奥の椅子に座っている怪獣の着ぐるみから胸まで上半身を出し Yシャツ姿の鉢巻きをした男をジーと見ていた。鉢巻きをした男は煙草を吸っていた。太陽の光が 男の顔と煙草の煙に当たって綺麗なシルエットが印象的だった。
鉢巻きの男は 私と目があった。私はジーと その男を見ていた。男も ジーと私を見て煙草を吸っていた。男の右肩には 何かの落書きがかかれている。「坊主 どこから来た」咄嗟の声でビックリした。まさか声をかけてくるとは思わなかった。
何も答えなかった。「カアチャンのところに帰りな」 そんなことを言われたかどうか? 私の記憶は いつも そこで途切れてしまう。
ただ あの 怪獣から胸まで出して 煙草を吸う姿と そのシルエットの美しさ。肩の刺青。お祭りの喧騒の中で聞こえた「坊主…」というハッキリした言葉。そしてジーと私を見てた目。 その記憶は 50年以上前の事にも関わらず 今でも ハッキリと覚えている。
その光景は、山田洋次監督の映画の「男はつらいよ」を見るたびに思い出します。私だけの記憶。私の昭和の代表的な風景です。
近くに線路があり 普通に蒸気機関車が走っていました。若者に人気だった車はケンメリ。 その時代には ケンメリは無かった。車は男のステイタスでした。車を持たないと女も出来ないと聞いていた時代の話です。