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夕張が財政再建団体になった理由


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財政再建団体計画」に対する反対討論 

2007年2月2日
議案第2号 夕張市財政再建計画書の提出について、および、関連するすべての議案について、反対の立場から一括して討論いたします。

 

まず、今回の財政破綻についてその大前提となるはずの、原因も責任の所在も明確にされないまま、すべての負担が市民に押し付けられようとしており、説明責任が果たされたとは到底いえません。

 

解消すべき赤字額を353億円としていますが、その内訳をみれば一般会計・住宅管理会計では60億円に過ぎず、観光事業会計分が186億円と53%を占めています。

 

第3セクターの運営実態【Mt.レースイホテル及びMt.レースイスキー場、石炭の歴史村、その後に造られた観光施設 等々】も含め、それぞれの会計の債務がどのような経過と原因で累積したのか、明らかにする責任があるはずです。詳細は不明のまま一方的に過酷な負担を市民に押し付ることが許されるはずはありません。

 

徹底的な情報公開が行なわれなければ、到底市民の納得は得られません。もちろん、補助金目当てに過大な観光投資に暴走し、莫大な赤字を隠蔽しながら不適正な経理を重ねてきた、夕張市の行政責任は厳しく問われなければなりませんが、補助金制度を利用して自治体に箱物投資・観光投資をあおり、誘導した国の産業政策と同時に国の政策に乗じて、自治体を借金漬けにし、金利で莫大な利益を得た大手銀行の果たした役割と責任についても問われなければなりません。

 

今般 示された夕張市財政再建計画は、11月に出された枠組みに、若干の手直しが加えられたものの、『全国最高の住民負担・全国最低の行政サービス』という基本路線はそのままで、再建どころか、市民生活が破壊され、地域破壊、自治体破壊につながるほどの過酷な内容です。


財政破綻の原因と責任について>

炭鉱で生まれた山間の町, かつて、「炭都」と呼ばれ、最盛期は11万人を超える人口を誇った夕張市、その夕張市が今、財政破綻にいたり、財政再建計画を確定しようとしています。

 

そもそも、夕張市財政破綻の根本的な要因は、国のエネルギー政策の転換による炭鉱閉山と産炭地対策にあります。明治時代の産業政策の下、開鉱し「まず石炭ありき」の中で生まれたマチが、国の政策によって石炭を掘り続け、国のエネルギー政策転換、石炭切り捨ての下で1981年、85年と続いた多数の犠牲を出した大規模災害を経て、87年の国の第8次石炭政策により、90年には全て炭鉱が閉山に追込まれました。

 

北炭夕張新炭鉱は閉山後、社会的責任を放棄し、それに伴って、夕張市が北炭所有の土地・住宅・病院などの引き取り、市営住宅・浴場・水道・学校・道路・体育館の整備などいわゆる『後処理』に費やした588億円の事業のうち、322億円を地方債で賄っています。

 

土地・山林全てが担保に提供されていたことから、市と市民が活用するにも抵当権の解除のため、相当の価格で市が買い取らざるを得ず、土地開発公社は、長期・短期借入金85億円を抱えていますが、使用している土地は13%にすぎません。

 

こうした北炭の反社会的責任についても、再検証される必要があります。公社の土地先行取得、使用・未使用の情報すべてが公開されるべきですが、このような土地開発公社の債務まで、市民が負担しなければならないのはきわめて不条理です。

 

政府のエネルギー政策の転換によって、市は炭鉱の閉山が進み、1960年には最多の約11万を超える人口が約十分の一にまで激減していく中で、市は地域の特性を生かした観光事業に取り組もうと、79年には「石炭の歴史村」事業に着手しました。

 

全国的なリゾート開発の下で行われた観光開発には松下興産が参入しましたが、松下興産はリゾートが下火になると一切を市に押し付けて撤退し、これも財政を圧迫する大きな要因になっています。

 

市が身の丈をはるかに超える観光開発に事業の見通しなく、次々に乗り出し借金を膨らませたこと、さらに、赤字財政のやりくりと隠蔽のために、会計間の不適切な操作を行い、結果として借金を膨大にしたことも、重大な要因です。

 

国の旧産炭地対策は、01年度には国が産炭地域臨時措置法を打ち切り、産炭地域交付金=年約2億円が廃止され、地方交付税の「産炭地域補正」も5年間で段階的に廃止されました。

 

さらに市が行財政改革で17億円の節減をはかったにもかかわらず、その時期に、『段階補正の縮小』と地方交付税大幅削減が重なり、自民・公明政治による「三位一体改革地方交付税等削減は23億円にものぼり、2000年度に比べると、05年度の地方交付税は68億円から47億円へ21億円もの削減となり、標準財政規模が50億円足らずの市財政への最後の決定的な打撃となりました。 

 

これが産炭法の失効とともに市財政にとどめを刺したのではないでしょうか。また、夕張市財政破綻に追込んだ国、適切な支援を怠った道とともに、大銀行の責任を改めて強く問う必要があります。

 

社会的・道義的に『貸し手責任』を問われなければならない、大銀行はどこなのか、今、夕張市民に『全国最高の負担、全国最低の行政サービス』が押し付けられようとしているとき、夕張市は債権者の全貌を市民の前に明らかにするのが当然の責任です。

 

情報公開の義務、主権者としての市民に対する『説明責任』があります。『再建計画』で市民の理解と協力を得ようとするからには、直ちに債権者別の債務の全貌を公開すべきです。

 

また、菅総務相も「債権者などの責任分担を明確にし、債権・債務を整理することが必要だ」と答えています。情報公開をうやむやにすれば市民の理解は得られるはずはありません。

 

また、財政再建団体への申請を表明した6月20日から、8ヶ月を過ぎた今となっても、問題の本質を市民に明らかにせず、こうなった最大の原因である、市民不在の行政のやり方が改められていません。

 

計画策定の段階のおいても たくさんの問題を残しています。市民の生活に重大な影響を及ぼす重要で膨大な審議資料は すべて委員会当日にしか 資料が出されず、議会や住民説明会で何度要求されても十分な情報公開がなされず、最終審議の場である昨日の委員会においてさえも、積算の根拠となる 数字や考え方が公にされず、チェックするための議会であるはずが、白紙委任に等しい審議を強行されたことは、総務省や道が標榜している「情報公開」にも、「住民の理解と納得」にも、程遠いものであるといわざるを得ません。


次に、再建計画が住民生活と地域を崩壊に導く問題点について、改めて指摘します。

今あたかも夕張市の財政運営、乱脈経営にのみ原因を求め、国と道の責任、企業や銀行の責任を不問にして、その犠牲を市民にのみ、転嫁する再建計画が策定されようとしていることは、断じて許すことはできません。

 

まず第一点目に、市民の命と健康が不安にさらされていることです。市立病院の閉鎖は救急医療・夜間診療を放棄することとなり、栗山町、岩見沢市、札幌周辺などへの長時間・広域の搬送・救急体制が必要となります。

 

また、入院病床の激減とともに人工透析不能になり、週一回程度の限定的ではあったものの、応援医師による診療が行われてきた眼科・歯科・耳鼻咽喉科産婦人科などを受信してきた患者は、他市町村の医療機関への転院を強いられ、患者や家族の体力的負担、高すぎる交通費負担と時間的負担を強いられることとなります。

 

市は、医師・看護師など医療スタッフ確保の困難を最大の理由としていますが、これをもって地域の医療体制を崩壊させることは許されるものではありません。

 

とりわけ、長期間にわたり、週に何度も治療が必要とされる透析治療に関しては、復活をめざし、それまでの間、透析患者の交通費負担を道が全額負担すること、他の診療科目の受診者に対しても、交通費の助成などが必要です。

 

また、救急体制の問題では、救急救命士が必ず乗務している、複数の救急車が必要であるにも関わらず、必要な人的配置がされていません。今、夕張市民が最も望んでいるのは、地域医療センターとして、名実ともに機能する医療施設です。

 

あらためて「住み続けられる夕張への再生」のために、「緊急医療・夜間診療・人工透析などの機能を果たす地域の医療センターとしての医療機関が必要であり、「いつでも救急出動できる救急救命士配置の複数救急車の確保」を要求するものです。

 

また、除雪に関しては降雪量が10センチから15センチに後退したことにより、地形的に不利な地域では交通に障害が出ています。地域の道路事情に即した安全を最優先にした除雪体制が必要です。

 

第二点目に、五十四事業の廃止については、緩和ないし代替措置が全くなされていません。

 

その事業の本来の趣旨や必要性をふまえ、市民が参画して必要性や対応策をよく論議することが重要ですが、通院交通費の復路助成、バス路線や便数の確保、市民法律相談、農業担い手後継対策、中小企業育成対策費補助などが軒並み打ち切り、地場産業育成でも、メロン農家への連作障害予防などまで打ち切られます。

 

第三点目に「市内唯一の養護老人ホームを廃止」「小中学校を統廃合」「集会施設・図書館・美術館・スポーツ施設・バス路線・老人福祉会館・公衆トイレの問題」など、施設の廃止と使用料金の大幅な値上げは、市民の生きがい対策、文化・スポーツ、生涯教育などに重大な支障をきたします。

 

憲法で保障されている『健康で文化的な最低限度の生活』を保障しながら、再建のための、銀行の債権の一部放棄・一部凍結や、国・道の責任として 住民への福祉・教育などの 行政水準の維持こそが 今求められています。

 

第四点目に、市職員の大量退職、第3セクター従業員など多くの労働者が雇用不安にさらされ、大量の市外流出が危惧されているにも関わらず、有効な雇用の確保・拡大の緊急対策すらなされていません。

 

市民が住み続けられる対策がなければ、計画の中に予定された税収すら見込めないはずです。これでどうやって、財政再建をするのでしょうか。

 

「国と道の責任、企業や銀行の責任を一切問わず、巨額な財政赤字のすべてを市民に負わせて自治体再編の『見せしめ』にすることは断じて許されることではありません。

 

夕張市の再建計画は赤字解消の財政再建計画であるとともに、夕張再生の計画でなければなりません。「ここで暮らし続けたい」「何か力になりたい」という住民の自治と助け合いが作れなければ、どんな財政再建計画があっても、夕張再生はできません。子どもたちも、お年よりも笑顔で、安心して暮らせる夕張が求められています。

 

夕張問題は、夕張だけの問題ではありません。求められているのは、憲法地方自治の本旨、住民の声に沿った夕張市の再生です。自治体に『スリム化競争』を強いるような政府の圧力に屈するのではなく、この財政再建計画は、まず、国や道、企業や銀行などの責任を明らかにしたうえで、抜本的に
見直すことが必要です。

 

また、住民が参画したうえで、地域のあり方を論議し、住民が安心して展望をもって暮らせる 夕張再生計画も 平行して策定することが必要です。

 

以上のことから、議案第2号 財政再建計画書の提出について、および、この議案にかかわるすべての議案についての反対討論といたします。

 

2007.2.2

ある夕張市議会議員の発言。

 

それから 13年後の2020年。現在 353億円あった夕張の借金は163億円あまりとなった。しかし、夕張の人口減少は止まらない。

【夕張 借金時計】

https://www.city.yubari.lg.jp/syakintokei/index.html

【夕張の人口推移】

https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010050000001001209/1